突然ですが質問です。
「あなたはウイイレで対戦する前に相手の集計データを確認しますか?」
これを普段見ない人or何を言っているのかわからない人はゲーム分析の重要性を概ね理解出来ていない可能性が高いです。
私は必ず確認してからフォーメーションを含めた戦術を組みます。
(普段ウイイレをやらない人は退屈な話で申し訳ございません。)
今回は2021/4に発売されたサッカーアナリストのすすめの内容を踏まえてフットサルにおける定量的なゲーム分析の重要性を解説したいと思います。
ゲーム分析とは?
ゲーム分析とは文字通り試合を分析すること。
おそらくほとんどのチームはすでにゲーム分析を行ったことがあると思います。
公式戦のあとに自分たちの試合動画を見て反省したり、次の対戦相手の試合動画を見て要注意選手をピックアップするようなこともゲーム分析にあたります。
ゲーム分析の手法は定性評価と定量評価の大きく2つに分類され、多くの人が行っているのは定性評価です。
しかし、近年のスポーツ業界はITの進化に伴い、定量評価(数字を使った評価)が増えてきました。
定量評価(数字)に意味はあるのか?
これに対しては人によって意見が大きく割れると思うが、前提条件(環境、チームの特色)が大きく変わらない限り、同じ現象はまた起きる可能性は非常に高いというのは個人的見解です。
2013年付近から流行りだしたAI(Artificial Interigence)は過去のデータを使って統計学やアルゴリズム(機械学習)をあてはめることで未来を予測しています。
もし、ゲーム分析における定量的な評価に意味がないという意見を主張するのであれば我々の生活を豊かにしてきた機械学習や統計学には全く意味がないという主張になりかねません。
つまり、何を言いたいかというと過去に起こった現象は同じ確率で再び起こる可能性が非常に高いということ。
今までの傾向や確率を計算すればある程度未来を予測することが出来るようになります。
最初の話に戻ると、このようなデータから次のような結論が導き出せます。
- カウンター>ポゼッション&ロングパス>ショートパス→引いて守ってロングカウンター
- 左サイド>右サイド(攻撃エリア)→左サイドに能力の高い選手を配置してる可能性が高く、次の試合も左サイドから攻めてくる可能性が高い
あくまでもこの分析方法は僕独自のやり方なので、これが正解とは限りません。
数字がもたらす客観的評価
定量評価の利点はその数字の客観性です。
定性評価も勿論大事だが、ときに説得力に欠けるケースがあります。
そんなとき数字をエビデンスに説明出来れば、より多くの人を説得させられるでしょう。
特に分析した内容をプレゼンする人がチームで立場的に弱い場合は数字を元に話すことは非常に重要になります。
アナリストという専門職
このようなゲーム分析は以前まで監督やヘッドコーチが行うケースが多かったですが、近年はアナリストという専門職がたてられるようになってきました。
その理由としてはゲーム分析を定量的に行う場合、膨大な時間(労力)と専門的スキル(ITスキル)が求められるため、分業したほうが効率的であるからです。
欧州のビッククラブ(マンチェスター・シティやリヴァプール)は3~4人のアナリストを抱えているのに対し日本では1人いるかいないかというの現状です。
アナリストに求められるスキルは以下のようなスキルです。
- フットボールへの理解
- ITスキル、リテラシー(情報収集力、映像機器、動画編集、プレゼン資料作成、数字を見る力)
- コミュニケーション力
ここで注目してほしいのはIT×フットボールの人材が非常にレアだということです。
今の時代ITスキルを使いこなせるだけでも市場価値が高いのにそれにフットボールの知識が加わった人はかなりレアなため、そもそもアナリストに必要なスキルセットを揃えるのが難しいです。
そのためどこのクラブも優秀なアナリストを求めているが中々見つからないのが現状です。
また、フットサルに限って言えば市場が出来ていないので適切なサラリーがもらえずに断念する人も少なくないです。
定性評価ありきの定量評価
ここまで定量評価の重要性について語ってきたが、数字に固執してしまうのはよろしくありません。
ビッククラブの分析方法を真似してアマチュアが同じデータをとってきたところでその数字には何も意味をなさないことだってあります。
大事なのはどのような狙いをもってその数字を集計して、その数字からどのような結論を導くのか?という一連のプロセスです。
あくまで定量評価はゲーム分析をするための一つの手段であることを忘れてはならず、アナリストにフットボールへの理解度が求められるのはこういうこが理由です。
フットサルでの定量評価
では具体的にどんなデータを集計しなければならないのだろうか?
今回はサッカーアナリストのすすめの内容を参考に集計すべき情報をレベル別に分類してみます。
レベル1:Basic Data
- チームシート(背番号と利き足、キャプテンをマーク)
- 得点、失点
- 警告、退場
- 交代
- タイムアウト
利き足は非常に重要な情報なので左利きor両利きの選手はマークします。
レベル2:Game Data
- シュート
- 枠内シュート
- ファウル
- FK
- CK
- KI(敵陣)
シュートと得点の関係から枠内シュート率や得点率などが割り出せます。
ここまでのデータはリーグによって公式に出してくれるところもあるのでそれを参考にするのも一つの手です。
(ちなみに関東大学フットサルリーグは公式に発表しています。)
また、レベル2からは以下の情報もセットで取得出来ればより良い分析が出来ます。
- 時間軸(試合を2or4or8分割する)
- 現象が起こった場所、空間
- 人(誰が?)
レベル3:Team Data
- パス(数、成功率)
- ピヴォあての数(くさびのパス、縦に長いパス)
- 裏へのパス(バックドア、スルーパス)
- ボール奪取、ロスト
- ドリブル
- ボールポゼッション率
なんでもかんでも全て集計するのではなくて相手がピヴォを置いた3-1のプレーモデルの場合は誰からのピヴォあてのパスが多いのか?、どのゾーンからのピヴォあてが多いのか?など要点を絞って集計することが大事です。
レベル4:Original Data
相手チームのプレーモデルを考察する上でピンポイントな現象に着目して集計することで相手の狙いが見えてくる場合があります。
- ピサーダ
- アウトサイドキック
- パラレラ
- ディアゴナル
- アラコルタ
- 旋回
- ボランチ(ジセーザ)
- ブロック、カーテン
- トンパ(コントラピエ)
- 3 on line(1 line) の形成
- ラインカット(列落ち)
これ以外にも集計できるデータはたくさんありますが、あえてここらへん止めておきます。
定性評価でやるべき局面
結論、どの局面も定性的に見るべきではあるが、特にセットプレーはサインプレー(ジョガータ)を使うチームがほとんどなため再現性が高いことから定性的にどのような狙いのセットプレーか分析するのは重要です。
その上で相手がどこを重点的に狙ってくるかを定量的に評価するのは有効です。
個人的にはまずすべての局面を定性評価し、その上で定量評価するという、
定性評価⇔定量評価のサイクルを回すことが非常に重要だと思っています。
東大ア式蹴球部(サッカー部)
最近の東大サッカー部のゲーム分析のレベルが非常に高いということが話題になっています。
東大はゲーム分析班(10人程度)を作り、選手とは別でデータサイエンスを専攻している(したい)学生を集めて独自で解析を行っています。
年間30万近くするような解析ソフトを導入したりと使っているソフトやハードのレベルもトップレベルで、真似したくても簡単に真似できるものではありません。
興味のある人は是非読んでみてください↓
Sportscode(ゲーム分析ソフト)
まとめ
個人的にこの本を読んで思ったことは、「日本のトップクラブでさえ、このレベルまでか。やろうと思えば自分たちもできそう」というのが感想です。
というのは、もっと難しい統計やアルゴリズム(回帰分析、クラスター分析、SVM等)を使って解析しているのかと個人的に想像していたが、そこまでの領域にはまだ達していませんでした。
しかし、データを集めるのが非常に面倒くさいため、そこまでした定量的な評価は大一番の試合を除いて基本やりたくない&コスパが悪いと思っています。
データの集計に膨大な時間をさくぐらいなら、もっと他にやるべきことはたくさんあるので優先順位を決めてタスクをこなして行きたいと思います。
ただ、将来的には画像認識によってデータを自動で全て集計できるようになると思うので、その時代がくれば定量的な評価にもっと取り組みたいです。
サッカーアナリストのすすめの内容はとてもこの記事では伝えきれない素晴らしい内容だったのでもし気になる方はご購入ください↓